終日私が事務所に不在だった日に、証券会社の訪問があったそうです。
「ぜひ当社の顧問に!」
・・・などという話ではもちろんなく、 いわく、
「資産運用について話を聞いていただきたい」
とのことだったようです。 所長が不在と聞いてもかなり粘ったものの、どうやら居留守ではなく本当に不在なようだと理解したかと思うと、
「では、ほかの方でもいいので、資産運用について(以下ry)」
とターゲットを切り替えるたくましさを見せつけた模様。おそらく4月に入社した新入社員が研修の後、はじめて地方の支店に配属され、
「とにかく名刺を100枚集めてくるまで帰ってくるな」
と言われるアレではないでしょうか。残念ながら、うちでは名刺を1枚もgetできなかったようですが。
もっとも、その新入社員さんにとって、時間があり、かつ心身とも万全な私が事務所にいた場合と、どちらが幸せだったのかは即断しかねることです。 かつての私は、最初に入った事務所の事件で商品先物取引事件にからみ、金融商品に関する知識を独学で勉強したのですが、結局独立後はその知識を生かす事件にほとんど恵まれませんでした。 その結果、私の金融商品に関する知識は、もっぱらセールスをもてあそぶことにしか生かされなかったのです。
そして、先物の勧誘電話に対しては常に収入も資産も上方申告し、興味のある上客を装ったうえでさんざん彼らに話させた上で、飽きてくると
「あれ、見通しが外れても様子を見ればいいというけれど、強制決済とかありますよね?オイショーとかあるんですよね?」
「今の取引って来春決済で、今冬は寒いって、決済の時には確実に影響なくなってますよね?どうしてそんなに自信満々で上がるって言えるんでしょうか??」
「おや?御社の社名で検索してみたら、『殺人事件』とか出てきたんですけど、関係ありませんよね???」
などと刃をつきつけ、昏い悦びに浸ることこそ、私の無上の喜びでした。
彼らにとっても、社会の中で生きていくには、様々な罠が待ち受けていることを早い時期に知る機会は、貴重なものなのです。 きっと、たぶん。