地裁の死刑判決への控訴が高裁で棄却され、上告中だった川崎・老人ホーム入居老人連続殺人事件の今井隼人被告人が11日に上告を取り下げ、死刑が確定したそうです。
有料老人ホームの職員だった被告人が、約2か月の間に3人の入居者を別々の機会にベランダから投げ落として殺害したという事件で、確定判決の事実認定「異時機会で被害者3人を死亡させる」という事実を前提とした場合、死刑事件裁判例の基準上、年齢・責任能力等の問題がなければ死刑を免れようがない事案です。
実は、筧千佐子死刑囚に対する2021年6月29日の最高裁の上告棄却判決以来、約1年10か月強にわたって新たな死刑確定がない状態が続いていました。戦後の死刑確定者が0だった年は、統計上1986年だけですが、この時の新規確定の間隔は約1年半と思われるため、おそらく今回が死刑の新規確定の間隔としては戦後最長でした。しかし、高裁死刑案件の最高裁での審理状況からすれば、今回の上告取り下げがなくとも、今年中に新規の死刑確定が出たと思われ、その後も年単位の空白は出ないのではないかと思われます。
死刑相当事案の長期的な減少傾向は、果たして今回で底を打ってしまったのかどうか。そこまでは断定しませんが、世界的に治安が良いと評価され、かつ死刑が限定的に運用されている日本においてなお死刑相当の凶悪事件がこれだけ起こっていることには、むなしさを感じざるを得ません。
人は人を殺せる そうつくられた
のです。