Home » NEWS » 1殺死刑の境界線・前編

1殺死刑の境界線・前編

例年、年末と年度末は重大刑事事件の言い渡しが相次ぐのですが、今年もいくつかの重大刑事事件の言い渡しが続いているようです。

もっとも、6人殺害被告人の一審死刑破棄、無期については批判もあるようですが、刑法上、心神耗弱が認定された場合に死刑判決は言い渡し得ないこと、実質的にも責任主義は刑罰の基本であることを無視した議論が多すぎます。心斎橋2人殺害については、高裁段階での無期地裁死刑、高裁無期という流れが最高裁で再度覆ることはないこと、新潟女児殺しについては、従来の判例的な傾向から、予想にたがわない判決でありました。

死刑を巡る総本山及び主流派どもの独善と策動には塵ほどの共感すら感じない私ではありますが、死刑という刑罰及びその適用対象となる重大刑事事件については、以前から強い関心を有してきました。そんな観点から、「死者1名の事件における死刑確定事件」の傾向を、覚書として残しておきます。

現在に至るまで、日本における死刑と無期の境界線として最も重要な意味を持っているのは、以前として1983年7月8日の永山事件第一次最高裁判決、いわゆる「永山判決」です。この判決以降、日本で死刑適用の是非が検討される事案においては、ほぼ例外なく永山判決における基準にあてはめたうえでの検討がなされるという意味で、極めて重要な意味を有しています。光市母子殺人事件の第一次最高裁判決の判決直後は、この基準が破棄ないし修正されたかのような論調もありましたが、実際には「永山基準」の一部である「人数」について、少年事件という限られた局面での解釈の相違を戒めた・・・という程度の意味というのが適切と思われます。

前記永山判決以降、数え間違いがなければ、その後第二次最高裁判決で死刑が確定した永山元死刑囚を含めて262名の死刑が確定していますが、そのうち死者が1名で死刑が確定したのは29名です。しかし、このうちかなりの被告人は、以下の属性に該当していることに留意するべきです。

殺人前科・前歴あり・・・13名

殺人前科・前歴を有していながら、社会に出てきた後にまた殺人を犯した場合、心神耗弱等の法的な減軽事由がない限り、ほぼ死刑判決を免れません(「ほぼ」という部分がガクブルで、私が把握している例外1件について、最高裁まで争われたにもかかわらず、なぜ死刑が回避されたのかがまったく不明)

罪名に身代金目的誘拐ないし身代金要求を含む・・・6名

(+罪名は強盗殺人だが、実質的に身代金要求に等しい・・・2名)

判例が身代金目的誘拐に対して非常に厳しいことは割と有名で、殺人前科がなくとも死刑になりうる事件としては一番ポピュラーです(ちなみに、「実質身代金要求」の案件は、金銭目的で資産家を殺す計画を立て、誘い出して監禁し、瀕死の重傷を負わせた被害者に自宅への電話をかけさせ、大金を用意させたものの受け取りに失敗し、その後被害者を計画通りに殺したという事案で、共犯者2名が同時に死刑確定しています)。日本の殺人の中では、事実上最も重く処罰される類型かもしれません。

ただし、殺人前科(前歴)ありの場合と比較すると、被害弁償等の事情がなくとも無期にとどまっている事案もそれなりにあり、まさに境界線上の事件といえます。

これらに一切あてはまらない死刑確定者は、約36年間で8名となります。「死者1名での死刑確定者」という観点で見た場合、そうそう簡単に出るものではないことが分かります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*