以前、マイケル・サンデル教授の「実力も運のうち」という意見を読んだ時に衝撃を受けたのですが、読んでみると、うなずける部分が多々ありました。
ただ、これは「ノブレス・オブ・リージュ」と同様に成功者側が自らを戒めるべき内容であり、一部が喜んで利用しているように、成功者ならざる側がこれをもって成功者を攻撃する手段としたところで、まったくうまくいかないだろうとも思いました。
特に、これから社会の中心となってくる世代である現代の40代以下の世代は、自分に全く関係のない経済の構造不況で上の世代からの何重にもわたる切り捨てを受け続け、そこからの脱落者は「自己責任」として見捨てられてきたわけで、その地獄の中を自らの努力で成功してきた人が、切り捨ててきた世代から
「お前の実力も運のうちだ。謙虚になって世のため人のために奉仕しろ」
と言われたところで、心に響くどころか、むしろ高確率で逆切れすることでしょう。
日本には「お客様は神様です」という言葉がありますが(期限は三波春夫らしい)、その言葉が商売する側の心構えとして使われていたうちは良かったけれど、お客様の側から「自分を神様として扱え!」というバックボーンとして使われ始めてからおかしくなっていった・・・という話も思い出しました。
高度に情報化された現代社会において、深い言葉でも、表面だけを切り出されて悪用されたり、炎上させられたりということが当たり前レベルであるだけに、ある言葉を使う場合には、その背後にあるものもしっかりと理解したうえで使わなければならないようです。