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現代日本の殺人統計の現状

数日前に事務所でかなり長い時間消防車のサイレンの音が聞こえていたと思ったら表町で大きな火事があり、次に津山に行っている間に大阪で大きなニュースということで悲惨極まりない放火殺人があったのですが、うとうとしている間に、被疑者の氏名が公表されておりました。亡くなられた被害者の冥福と、負傷されている方々の回復を祈ります。

京アニ放火殺人事件とよく似た事件だと思ったら、実行者が特定されている殺人事件としては、現時点の死者24人の状態で、京アニ放火事件(死者36人)に次ぎ、いわゆる津山事件(死者24人、なお事件発生当時、事件現場は「津山市」ではなかった)と並ぶ死者を出したことになるようです。相模原知的障がい者施設襲撃事件(死者19人)、地下鉄サリン事件(死者13人)、大阪ビデオ店放火殺人事件(死者10人)座間9人殺害事件(死者9人)、池田小学校襲撃事件(死者8人)、秋葉原通り魔殺人事件(死者8人)などの日本犯罪史に残る数々の事件を上回っているわけですが、ここにあてはまらない「実行者が特定されていない殺人(である可能性が高い)事件」として、新宿歌舞伎町雑居ビル火災事件(死者44人)、長崎屋放火殺人事件(死者15人)、川崎市簡易宿泊所火災事件(死者11人)などが別に存在しているというのは恐ろしい話です。

閑話休題。こうして事件を並べてみると、割と最近の事件が並んでいるため、日本の治安は著しく悪化しているような印象も受けますが、その一方で、厚生労働省による統計では、他殺による死者数は減少し続けていて、

殺人事件被害者数|年次統計 (nenji-toukei.com)

人口動態調査 結果の概要|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

昭和30年2119人(統計上最多)→昭和40年1406人→昭和50年1429人→昭和60年1017人→平成7年727人→平成17年600人→平成22年437人→平成23年415人→平成24年383人→平成25年342人→平成26年357人→平成27年314人→平成28年290人(相模原事件)→平成29年288人(座間事件)→平成30年273人→令和元年299人(京アニ)→令和2年251人→令和3年(7月まで)146人

と、京アニ放火殺人事件があった令和元年はさすがに増加していますが、それ以外はほぼ一貫して減少し続けていることが分かります(今年も今回の事件がなければ前年並みにとどまったと思われますが・・・)。

もっとも、そうであるとはいいながら、最小レベルのここ5年間ですら、毎年200人台後半の人命が、「他殺」によって失われているのも現実です。

「ここ5年間」ということで平成28年以降の死刑判決確定数を調べてみたところ、

平成28年6人→平成29年3人→平成30年2人→令和元年3人→令和2年4人→令和3年3人(12月18日まで。たぶんもう増えない)

ということで、殺人による死者数の減少に合わせて死刑判決も近年は年間片手の指に収まる程度に収まっていますが、逆に言えば、この21人によって合計76人の生命が奪われています(特異値ともいえる相模原事件、座間事件を除いても19人が48人を殺害。なお、1人殺害によって死刑判決が確定した被告人は、この中には存在しない)。殺人事件が減少しているといっても、こうした事件はいまだになくならないという現実も、また重いものです。

今後も様々な報道の中で「対策」の必要性が多方面から主張されると思われますが、こうした事実を離れた極端なイデオロギー的主張には十分な留意を要すると思うのです。一般市民の生命を脅かす危険な殺人事件自体は一貫して減少傾向にあるものの、それでもここ5年間で200人台後半の生命が失われているという現実に根差し、国民の理解と納得の得られる形での刑事司法の実現を目指していくべきです。

というわけで、笑六法としては、責任主義を基調とする現行刑法の刑罰体系については断固維持を主張する一方、国民世論をおよそ無視せよと高らかに宣言するに等しい死刑即時廃止論にも強く反対します。

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