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死刑に関する反主流派の個人的見解

昨日、2年ぶりに死刑執行があったと報道されました。どこぞの総本山は、例によって、それも事前に執行があった場合に備えていたかのように、誰が真剣に読んでいるのかは不明な抗議声明を即日出していますが、よく読めば日付と政治家の名前、執行拘置所と人数などを入れ替えればそのまま通用するテンプレ通りです。

私自身は、日本国憲法第31条に

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない

と明文で定めがある以上、法律の定める手続きによって生命を奪う死刑を、法律の定める手続きによって自由を奪う自由刑とは別異に扱い、死刑廃止を日本国憲法の要請であると導くことは不可能であると解釈しています。違憲ならざる死刑制度の廃止を実現するのであれば、国民世論の支持を得た上での法律改正ないし改憲以外にあり得ませんが、現状は到底そのような情勢にないと考えています。

よって、「世論調査をよりどころに死刑制度の存置を正当化することは許されない。」などと公言して、死刑の即時執行停止と死刑廃止を要求する総本山の死刑廃止論とはまったくもって見解を異にします。

また、 死刑廃止論自体の当否は措いても、総本山においてこのような声明を出すことを推進されている方々は、このような声明を出すことによって、出さない場合とは異なるどのような効果によって死刑廃止への道筋を描こうとしているのかは、まったくもって不明です。

ちなみに、死刑問題についての「世論」の基礎となっているのは

基本的法制度に関する世論調査 2 調査結果の概要 2 – 内閣府 (gov-online.go.jp)

と思われます。

ここで「死刑は廃止すべきである」が10.2%、「死刑もやむをえない」が80.8%であったことは割と知られていますが、「死刑は廃止すべきである」と答えた10.2%に対し、さらに即時全面廃止か、「だんだん死刑を減らしていき、いずれ全面的に廃止する」かを聞いたところ、前者の即時全面廃止論は36.6%、後者の漸進的廃止論は57.0%だった・・・ということについては、廃止論者にとってさらに不利な事実である一方、廃止尚早論者はわざわざそれに言及しなくても、死刑廃止に進みそうな雰囲気ですらないことから、いずれからもあまり言及されません。しかし、「直ちに死刑執行を停止したうえで、全面的に廃止する」となれば、死刑廃止の方向性が明らかにされたうえで執行が停止されているのに新たな死刑判決が出るはずもありません。つまり、ほぼ即時全面廃止に等しい総本山の声明の立場と同様の意見を持つ国民は、10.2%ですらなく、10.2%の36.6%、すなわち3.7%強しかいないということになります。

国民の3.7%強しか支持しない政策を採用するよう声高に要求し、「世論調査をよりどころにするなど許されない」などと言い放つこれらの声明が、本来、法律改正にむけて支持を得なければならない「その他の国民」からどのようにみられ、死刑廃止に向けて役立っているのかという問題提起は、廃止への強い情熱を持つ方々の間からこそなされるべき問題であるように思いますが、そうしたお話は聞いたことがありません。かくして同様の声明は出され続け、「その他の国民」との乖離はさらに深まっていくのでしょう。

私が考えてあげる義理は全くないのですが、こうした総本山の政治的稚拙さにも関わらず、「その他の国民」の風向きが変わるとすれば、唯一「執行済みの死刑囚の無実が、明らかな形で認められる」という事態が生じた場合だろうとも思っています。実際、英国の死刑廃止はそのような形でなされています。この前そのことを指摘したら、声明を支持する方に「簡単なように言うな!」とずいぶん怒られてしまいました。いや、だからこそ、死刑廃止自体、簡単にできていないんじゃないかと。。。

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